【特選】
屋台酒ゆずれないこと一つある 渡辺 克己 千葉県松戸市
【選者評】一介の庶民にとって、たまの屋台酒が自分を発散する方法か。居合わせた顔見知りと馬鹿話に調子を合わせることもあるが、しかし、ここぞという一点は相手が誰であれゆずれぬものを持っているぞという骨太な一句。
【特別賞(登紀子賞)】
ひとり酒夢の雫を飲んでいる 中安 千呂丸 兵庫県神戸市
【登紀子さん評】美しいですね、とっても。「夢の雫」という表現にひかれました。ひとりの淋しさもちょっぴりこめられてますね。
【佳作】
酔いほろろ僕も小さな星になる 前田 忍 大阪府大阪市
一献を妻に捧げる退職日 鈴木 土視男 兵庫県神戸市
さかずきをこぼれた酒をいとおしみ 小野 一郎 大分県玖珠町
友達のままでいましょう月見酒 沼尾 美智子 兵庫県明石市
日本酒を飲むと優しい男の目 古屋 清仁 山梨県甲州市
平凡に生きているから美味い酒 木村 徹 岩手県宮古市
祝福のさかずき高く高くあげ 川上 隆 兵庫県三木市
清貧を笑い飛ばせる酒二合 有賀 昭七 愛知県名古屋市
しがらみを解かれて春の酒になる 椎名 弘 茨城県牛久市
銚子一本心に翼つけに来る 内橋 実三郎 兵庫県西脇市


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第9回
日本酒の川柳受賞作品発表!

 6月〜7月に募集していました「日本酒の川柳」の受賞作が決定しました。今年は全国各地から1,130名、2,000句もの川柳が寄せられました。
 賞は、「特選」と歌手の加藤登紀子さん選出の「特別賞(登紀子賞)」が各1句ずつ、「佳作」10句、「入選」89句、「日本酒の日」の10月1日にちなんで合計101句が選ばれました。
 応募いただいた皆さま、本当にどうもありがとうございました。来年もぜひ応募してみてください。お待ちしています!

●選者総評
  数多い佳句を今年も全国から寄せて下さいまして、有り難うございました。
  伝統ある日本酒も、それを取り巻く状況は日々変化するものだということが、皆様方の句を
 拝見していますと感じられます。
  しかし、どのような状況に於いても柔軟に対応できるのもまた日本酒だからこそ、の思いは
 揺るぎません。
  今年の特選である〈屋台酒ゆずれないこと一つある〉は、このような時代だからこそ輝く一句
 でもありましょう。そして特別賞(登紀子賞)の〈ひとり酒夢の雫を飲んでいる〉は評にも書かれ
 ているように美しい句です。
  考えてみれば、時代が移り変わってゆくことは、日本酒の川柳を詠む題材が広がることでも
 あり、楽しみな気がするのです。
                                            大 西 泰 世 


●選者紹介

 大西 泰世(おおにし やすよ)
    1949年姫路市生まれ。
    著書に、句集「椿事」「世紀末の小町」「こいびとになってくださいますか」、共著に「現代
   の俳句」「短歌俳句川柳101年」他がある。
    現在、関西学院大学、兵庫県立大学講師。NHKラジオ「土曜ほっとタイム」レギュラー。

【入選】
相棒の犬と一緒の月見酒 内田 隆一 埼玉県さいたま市
一合で詩人二合で宇宙人 北野 哲男 兵庫県三田市
宵の月窓に招いて手酌酒 井内 雅仁 大阪府吹田市
車座になるとまあるく酔ってくる 宮ア 刀一 兵庫県多可町
ため息をお猪口に入れて一気飲み 石川 照夫 神奈川県厚木市
薔薇になれ百合になれよと酒を注ぐ 門脇 かずお 鳥取県米子市
笑うにも泣くにも男酒がいり 井田 寿一 滋賀県東近江市
言い過ぎと気づき黙って酒を注ぐ 池田 功 神奈川県川崎市
背中押す勇気をくれたこの一杯 清水 和弘 東京都府中市
隣り合う人に酌する屋台酒 掛園 正 宮崎県宮崎市
ほろ酔いの俺のとなりに妻がいる 西秋 忠兵衛 千葉県千葉市
細い指切子の猪口が大好きで 京極 久美子 兵庫県明石市
酔うほどに多弁の奥にある孤独 山本 鍛 北海道旭川市
酌み交わす酒はあの日と同じ色 藪西 多可子 兵庫県加古川市
別世界あらばここよと酒を注ぐ 宮尾 美明 愛知県愛西市
左遷地のよさを地酒に教えられ 河島 清史 石川県金沢市
一合の酒で明日の螺子を巻く 辰巳 和子 兵庫県宝塚市
ケータイはオフ日本酒と語り合う 居谷 真理子 奈良県橿原市
地酒飲む舌は故里忘れない 黒田 忠雄 兵庫県姫路市
乾杯とさかずき上げてこの良き日 林 玉恵 兵庫県神戸市
銀婚式注しつ注されつ赦し合う 松永 せい子 神奈川県清川村
くちびるが俺より先に酒を受け 長田 菓志也 兵庫県神戸市
天下取る酒へ命をふくらます 中本 義信 兵庫県相生市
断りが上手に言えぬ生一本 嶋田 ちか 兵庫県加古川市
冷酒でも一味ちがう孫の酌 齋藤 八兵衛 秋田県大仙市
祝辞より早く頂戴したい酒 小林 悟 新潟県新潟市
自分史にたっぷりとある酒の章 山崎 秀雄 埼玉県吉川市
妻が注ぐ酒なら明日の糧になる 藤田 智代女 岩手県盛岡市
熱燗に雪見障子をちょっと開け 関根 伸子 埼玉県さいたま市
ワンカップ買って気楽な一人旅 関塚 文子 東京都世田谷区
盃を重ね心の扉あく 笹山 昇 兵庫県高砂市
のめぬなら話さぬなんてよくもまあ 稲田 悦子 青森県八戸市
青天の下で飲む酒野趣に富み 水田 祥子 兵庫県明石市
恋日記酔わせ上手の名を綴る 樋渡 義一 佐賀県伊万里市
夕やけにおつかれさんとコップ酒 山田 新一 宮城県川崎町
旅の酒飲めない妻も頬を染め 藤井 良志樹 兵庫県姫路市
返事する決め手は父と飲める人 佐溝 美智代 兵庫県明石市
さかずきに並々と盛る喜寿祝 河村 隆 兵庫県神戸市
この酒を飲めば芙蓉に紅がさす 西川 ツヨ子 兵庫県穴粟市
君がいてお酒があれば不足なし 森本 信雄 東京都国立市
こまるほど酒がうまくて寝正月 宮ア 喜美子 兵庫県多可町
言い知れぬ悔いはお酒で埋めておく 田正司 敏子 兵庫県多可町
百薬の長の線引き妻が決め 本間 順一 東京都府中市
一ぱいの酒に預けるでかい夢 板井 ちさ代 兵庫県加西市
熱燗で後期高齢ひとくさり 丸岡 弥生 兵庫県多可町
日本酒はここ一番のごほうびに 和田 初子 東京都八王子市
酌み交わし互の愚直笑いあい 内橋 直也 大阪府吹田市
わだかまりゆっくり溶かす熱い酒 岡田 康子 兵庫県西脇市
しあわせを一人占めするコップ酒 山下 好弘 兵庫県神戸市
年重ね酒の旨さの判る今 中島 順子 愛知県一宮市
慰めの言葉は要らぬ酒を酌む 三吉 誠 福岡県福岡市
雨だれを話し相手のひとり酒 小山 肇美 兵庫県宝塚市
無器用な猪口持つ指に一目惚れ 本田 いづみ 東京都武蔵野市
嫁が来て村の手拍子ひとつ増え 樫本 範 東京都杉並区
熱燗や昭和を生きし顔ばかり 菟原 輝夫 埼玉県狭山市
テーブルに溢れた酒で君を描き 小林 功 千葉県船橋市
徳利に夕陽溶かして呑んでいる 古賀 由美子 佐賀県唐津市
美味い酒また青春の歌になる 福島 海光 神奈川県藤沢市
二杯目が笑い飛ばした悩み事 岡本 せんじゅ 兵庫県尼崎市
酔うと出る十年前のあの話 池永 美樹 千葉県浦安市
やめられぬお酒が俺に惚れている 塩塚 覚三 兵庫県姫路市
初盆へ酒米の出来自慢する 堀 正和 兵庫県三田市
晩酌にひとりつきあうひざの猫 星野 ひとみ 愛知県名古屋市
酔うほどに人が恋しい午前2時 中村 文子 福岡県北九州市
妻が開け娘が空けた大吟醸 森山 高史 沖縄県大宜味村
やかんから銚子取り出す仕草良し 今村 光夫 神奈川県横浜市
成人を喜ぶ父が飲めと出す 水浜 洋治 大阪府堺市
失恋の傷に泌み入る夜の酒 渡辺 智乱 兵庫県神戸市
ほろ酔いの肩越しに見る遠花火 林 由美 東京都新宿区
これという不幸もなくて酒うまし 伊藤 仁美 岩手県盛岡市
一杯の酒で垣根が低くなる 山ア 撃 兵庫県加古川市
一合の酒もてあまし老を知る 平 成 千葉県千葉市
納涼に一杯月にもう一杯 松下 幸子 兵庫県神戸市
夏は冷喉を流れる天の川 武田 志織 東京都日野市
見つめ合う星空の下いい酒だ 奥野 加奈 大阪府忠岡町
とりあえず酒は嗜む程と言い 勢志 孝志 兵庫県丹波市
酌み交わす酒に歳月ひとっ跳び 梅津 康治 山形県上山市
ため息をやがて寝息に変える酒 柚木 啓子 広島県広島市
酒をつぐお疲れさまの気持ち添え 久保 栄子 茨城県つくば市
気がつけば父に似ている笑い酒 宇井 久 大阪府豊中市
上弦も下弦も酒の友となり 大塚 登 静岡県熱海市
君を知り酒を知りつつ未だ言えず 村上 久美 岩手県滝沢村
酒飲めぬ妻が程よく燗つける 佐藤 民男 宮城県栗原市
本心に触れた思いで飲むお酒 金丸 茂春 埼玉県朝霞市
ほろ酔いのこれ以上なし膝枕 藤本 明久 石川県金沢市
口あたりきりりと冷酒効いてくる 住田 勢津子 愛知県愛西市
杯に銚子かたむけいい音だ 岡田 實 岐阜県大垣市
大皿に目刺し二匹の酔いごごち 斉藤 真一 秋田県秋田市
気のおけぬ仲間やがては酒となる 永島 忠良 栃木県市貝町

(敬称略)