藁(ワラ)でも切れる やわらかいお餅などで賑わう

 加美区熊野部で、藁(ワラ)でも切れる柔らかいお餅などをつくって村人達が集う珍しい行事が1月27日(日)同集落公民館で行われました。
 これは、少なくとも約120年ほど前から伝わる「すべきり行事」と呼ばれる伝統行事です。この行事では、同集落にある氏神・稲荷神社にお供えする鏡餅・小餅と、藁でも切れる柔らかいお餅「すべきり餅」、集落の皆さんで味合う「手の窪(くぼ)」とよばれるお餅の3種類を作ります。
 最初に作るのは鏡餅です。このお餅は「手伝い」と呼ばれる男性10名が5人一組となって、「オバア」と呼ばれる男性の指示に従い餅をつきます。神前に供えるお餅だけに「手伝い」は白い割烹着に、頭に“祭”と書かれた手ぬぐいを巻き、藁を敷き詰めた餅つき場にわら草履で登場しました。そして、同集落の大工が集落内の松と檜で作った長さ約80センチの杵(穂:47㎝で松を使う、枝:75㎝で檜を使う)を手にし、口にサカキの葉を一枚くわえ粛々と餅をつき始めました。
 口にサカキの葉をくわえるのは、無駄口をたたかないためだとか・・・。「ペッタン、ペッタン」と軽く高い音が響き渡り約1時間(12升を2回に分けてついた)かけてつき上げると「大当人」と呼ばれる2人の男性が稲荷神社へお参りし、餅が無事につき上がったことを報告しました。
 次に作ったのは「手の窪」です。集落のみんなで小豆やきな粉をつけて食べました。子ども達は、出来上がった「手の窪」を口に頬張りながら「お正月家で食べたお餅と全然違う。やわらかい」と歓声を上げていました。
 最後は「すべきり」です。「大当人」が、昨年自分の田んぼで採った餅米の稲藁を準備し、他のお餅同様「手伝い」がつきあげます。「めでた、めでたの、若松様よ、枝も栄えてよ、葉も茂る、おもしろや・・・・」と「オバア」が伊勢音頭の節に合わせ「すべきり歌」を歌い始めると、杵を振り上げる「手伝い」の動作も一段と力強くなり、みるみるうちにつき上がりました。「すべきり餅」は昔、集落全員に配り歩いたようですが、現在では神主・住職をはじめ当行事の関係者に配られています。
 なお、来月3日(日)お当渡しの行事に今回作った鏡餅を稲荷神社にお供えします。

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